シッシー君の文化財探訪日記 「川崎市市民ミュージアム収蔵資料紹介(梶ヶ谷神明社上遺跡出土品)」
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川崎市内の豊かな歴史や魅力を物語る文化財や博物館等の情報を、川崎市文化財キャラクターのシッシーくんがご紹介します。
【シッシーくん】
市域3か所に伝わる獅子舞から生まれた文化財の精。川崎市の文化財保護推進キャラクター。
性格はおっちょこワイルド。好物はかわさき育ちの野菜・果物。口癖は「シッシッシー」。
2023年2月17日川崎市市民ミュージアムを訪問しました~収蔵品を紹介します(4)~
こんにちは、シッシーです。毎日寒いですね。ボクはしもやけで真っ赤になってしまったシー!みなさんは厚着の服装でしっかり対策してくださいね。
今回も川崎市市民ミュージアムを訪問してきました。休館中の市民ミュージアムでは、考古資料の再整理作業を行っています。
作業の中で学芸員の目にとまった資料を皆さんに紹介するっシー!シッシッシー~。
「川崎の弥生時代の始まり」
皆さん、こんにちは。
教育委員会事務局文化財課学芸員の櫻井です。
今回ご紹介するのは、川崎市重要歴史記念物「梶ヶ谷神明社上遺跡出土品」です。
梶ヶ谷神明社上遺跡は、高津区梶ヶ谷にあります。現在梶ヶ谷小学校がある場所のすぐ西側の台地上が遺跡の場所です。川崎市内にある弥生時代の遺跡はその多くが後期の遺跡です。梶ヶ谷神明社上遺跡は発掘当時、川崎市内で初めて発見された弥生時代中期の遺跡でした。調査数が増えた現在でも、市内の弥生時代中期の遺跡は数が少なく、当時の社会や生活を研究する上で梶ヶ谷神明社上遺跡出土品が果たす役割は変わらず大きいといえます。
遺跡からは2軒の竪穴住居とともに、土器、石器、鉄器、玉類など豊富な遺物が出土しており、当時の生活の様子を知ることができます。
梶ヶ谷神明社上遺跡出土土器
梶ヶ谷神明社上遺跡からはたくさんの土器が出土しています。そしてその多くが小さな破片ではなく、完全に近い形をしているのが特徴です。これらの土器は住居の中の壁際や柱の穴のそばからまとまって出土していることから、壊れて使えなくなった土器を捨てたものではなく、当時、住居に暮らしていた人が、日常的に使用していた土器を並べて置いていたものではないかと考えられます。家の中の空間をどのように使っていたのかがわかる貴重な事例です。
また、地元で作られた宮ノ台式土器(みやのだいしきどき)に混ざって、中部地方の栗林土式土器(くりばやししきどき)など他地域の土器も出土しており、当時の地域間の交流の様子を知る手掛かりとなっています。
梶ヶ谷神明社上遺跡出土の石器(左)と鉄器(右)
また、木製品の加工などに使われたと考えられる石斧とともに、鉄製の斧や鑿(のみ)が出土しています。弥生時代中期後半のこの時期は、石器から鉄器への移行期と考えられていますので、それを裏付ける重要な事例です。当時とても貴重なものだったはずの鉄器を所有することができたこの住居の居住者はどのような人物だったのでしょうね。
梶ヶ谷神明社上遺跡出土の管玉(くだたま)
管玉と呼ばれるビーズが4点出土しています。装身具である管玉は、通常お墓から発見されることが多いものです。住居の中から見つかった場合、そこを管玉の製作場所と考えることがありますが、その場合未成品(みせいひん)と呼ばれる作りかけのものや、製作途中に発生する破片や工具などが一緒に出土します。梶ヶ谷神明社上遺跡ではそういった遺物は出土しておらず、管玉を住居内で保管していたようです。
川崎市内では現在まで弥生時代前期の遺跡はみつかっておらず、梶ヶ谷神明社上遺跡ができた中期後半頃から遺跡が増えはじめます。梶ヶ谷神明社上遺跡とそこから出土した豊富な遺物は、川崎市内の弥生時代の始まりを知るうえで非常に重要な資料なのです。
お問い合わせ先
川崎市教育委員会事務局生涯学習部文化財課
住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地
電話: 044-200-3306
ファクス: 044-200-3756
メールアドレス: 88bunka@city.kawasaki.jp
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