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シッシー君の文化財探訪日記 「川崎市市民ミュージアム収蔵資料紹介(貝殻でつけた文様をもつ土器)」

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シッシー君 自画像

 川崎市内の豊かな歴史や魅力を物語る文化財や博物館等の情報を、川崎市文化財キャラクターのシッシーくんがご紹介します。

 【シッシーくん】
 市域3か所に伝わる獅子舞から生まれた文化財の精。川崎市の文化財保護推進キャラクター。
 性格はおっちょこワイルド。好物はかわさき育ちの野菜・果物。口癖は「シッシッシー」。

2024年1月17日川崎市市民ミュージアムの収蔵品を紹介します(8)

 こんにちは。シッシーです。

 すっかり寒くなりましたね。阪神淡路大震災があった今日1月17日は「防災とボランティアの日」です。

 災害から文化財を守るため、今日も寒い中、頑張るっシー。

 今回も川崎市市民ミュージアムの考古資料の再整理作業を見てきました。

 作業の中で学芸員の目にとまった資料を皆さんに紹介するっシー!シッシッシー~。

貝殻でつけた土器の文様

 

 皆さん、こんにちは。

 教育委員会事務局文化財課学芸員の櫻井です。今回取り上げるのは、貝殻でつけた土器の文様「貝殻文(かいがらもん)」についてです。

 縄文土器の文様といえば、撚った縄を粘土の表面に転がしてつける「縄文」がよく知られていますが、縄ではないものでつけた文様・装飾もたくさんあります。棒状の道具で線を引いたり、粘土の紐を貼り付けたり、半分に割った竹管(ちっかん)で平行線を描いたり、人の爪を押し当てて文様を描くこともあります。

 ここに挙げたような土器に文様をつけるための道具を施文具(せもんぐ)と呼びますが、時期や地域によって貝殻を施文具として使用することがあります。

 川崎を含めた関東地方では、縄文時代早期後半から前期前半の時期に貝殻を用いてつけた文様をもつ土器が多くみつかります。

 この時期は「縄文海進」といって、地球が温かくなり海面が現在よりも数メートル高い位置にあったといわれています。縄文海進最盛期には、現在の高津区千年から末長、久本の辺りまで海が広がっていたと考えられており、実際その周辺では多くの貝塚がみつかっています。

 それらの貝塚の中から、今回は高津区新作にある新作貝塚出土の貝殻文土器をご紹介しましょう。

貝殻条痕文(かいがらじょうこんもん)

 この破片は外側にも内側にも横方向に並ぶ線がみえますね。貝殻条痕文という文様で、縄文時代早期後半によくみられるものです。縁にギザギザのある貝を粘土の上で引きずると同じような文様があらわれます。

かいがらじょうこんもん どきのがいめんのがぞう

貝殻条痕文(外面)

かいがらじょうこんもん どきのないめんのがぞう

貝殻条痕文(内面)

ねんどにかいがらじょうこんもんをさいげんしたがぞう

貝殻条痕文の再現

貝殻殻表圧痕文(かいがらかくひょうあっこんもん)

 表面にギザギザのある二枚貝のやや平べったい部分を粘土に押し付けると小さなくぼみが何列にも並ぶ文様がつきます。縄文時代前期前半によくみられる貝殻殻表圧痕文です。

 この文様を隙間なくつけると、写真の土器のようにまるで縄文のようにみえますね。当時の人もそのような効果をねらったのかもしれません。縄文ではない施文具でつけられた縄文のような文様のことを擬縄文(ぎじょうもん)と呼びますが、これも擬縄文の一種と言っていいでしょう。

かいがらかくひょうあっこんもんのどきのがぞう

貝殻殻表圧痕文

ねんどにかいがらかくひょうあっこんもんをさいげんしたがぞう

貝殻殻表圧痕文の再現

貝殻殻頂圧痕文(かいがらかくちょうあっこんもん)

 次にご紹介する破片は複数の貝殻文を組み合わせています。

 破片の上部、横方向にでっぱりがありますが、これは粘土紐を貼り付けた装飾です。その上下に小さな扇形の中に細い溝が並んでいるのが見えるでしょうか。これは貝殻の一番とがっている部分「殻頂」を粘土に押し付けることでできる貝殻殻頂圧痕文です。こちらも縄文時代前期前半によく見られる文様です。

 一方破片の下のほうにはもう少し粒の大きい窪みが並んでいます。先ほどご説明した貝殻殻表圧痕文です。一つの土器の文様をつけるのに、貝殻のいろいろな部分を使っていたことがわかります。 

かいがらかくちょうあっこんもん と かいがらかくひょうあっこんもんがあるどきのがぞう

2種類の貝殻文をもつ土器

ねんどにかいがらかくちょうあっこんもんをさいげんしたがぞう

貝殻殻頂圧痕文の再現

 新作貝塚からは、シジミやアサリ、ハマグリ、カキなど現代の私たちにもお馴染みの貝を含め複数種類の貝が出土しています。その中でも土器の文様をつけるのに利用されることが多いのがハイガイやサルボウガイと呼ばれる表面に凸凹のある二枚貝です。

 海の近くで暮らし、さまざまな貝殻が常に身近にあったであろう当時の人たちですが、その中でも土器の装飾に向いた貝を選んで使っていたのですね。
はいがいのがぞう

 いかがでしたか?

 ちなみに、ハイガイは温かい海域の泥干潟に生息する貝で、現在国内では瀬戸内海の一部と九州有明海に分布していますが、干潟の減少とともにその数を減らしており、国内では希少な貝です。東京湾や相模湾周辺では縄文海進とともに増加し、縄文海退とともに姿を消したことが分かっていますので、もし川崎市域周辺でハイガイをたくさん見つけた場合、そこは縄文時代の貝塚だったのかもしれません。

お問い合わせ先

川崎市教育委員会事務局生涯学習部文化財課

〒210-0004 川崎市川崎区宮本町6番地

電話: 044-200-3306

ファクス: 044-200-3756

メールアドレス: 88bunka@city.kawasaki.jp

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