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【スマホ・タブレット端末版】ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.26 ~みんなで考えるSDGs part1 川崎水素戦略~

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世界に誇れる最先端エリア川崎臨海部

日本最大の工業地帯として知られる京浜工業地帯の中核として、大きな発展を遂げてきた川崎臨海部。鉄鋼、エネルギー、ものづくりをはじめとする各社の優れた技術力は、企業の垣根を越え相互に連携しながら、今日も日本の産業を支え続けています。また近年では、健康・医療分野における世界最高水準の研究開発拠点として新たなイノベーションを生み出す役割も。
川崎市の「力強い産業都市づくり」の中心地として、国内外から熱い視線が注がれています。

SDGsとは?

最近、よく見聞きする「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。
新聞やテレビで、学校の授業や職場での話題を通じて「SDGsを知った」という人も多いことでしょう。
SDGs とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015 年に開かれた国連サミットの場で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標であり、「17 の目標」と「169 のターゲット(具体目標)」で構成されています。
2030 年までの達成をめざし、世界中の国の政府や企業が取組を進めていますが、生活者である私たちも当事者の一人。日々のくらしに密接に関わっている問題です。

水素は「脱炭素社会」の扉を開くカギ 環境先進都市をめざす川崎水素戦略とは?

SDGsにも関連する取組として、川崎臨海部が推進する「川崎水素戦略」。具体的にはどういった内容なのでしょう。私たちのくらしとのかかわりは?
川崎市役所 水素・エネルギー戦略推進担当の篠原が説明します。

川崎市 臨海部国際戦略本部臨海部事業推進部臨海部事業推進部 水素・エネルギー戦略推進担当 担当課長 篠原顕

川崎市 臨海部国際戦略本部
臨海部事業推進部
水素・エネルギー戦略推進担当
担当課長 篠原 顕

臨海部の「水素戦略」ってなんだろう?

川崎市では、脱炭素に向け注目が集まる前から、工業利用という形で水素の積極的な利用が行われています。

<篠原>
「川崎臨海部で使われている水素の量は、20Nm3 (ノルマル立米:0℃、1 気圧のときの1 ㎥あたりのガス量を表す単位)です。どのくらいの量かというと、トヨタ自動車の水素カー『新型MIRAI』に、1 時間あたり約3,200 台充填できるほど。日本全体で使われているおよそ10% が、ここ川崎臨海部で扱われているんですよ。必要とする企業に水素を供給するために、コンビナートには水素パイプラインが張り巡らされています。こうしたネットワークが形成されていることは川崎臨海部の大きな特徴です」

この水素を“新時代のエネルギー”として位置づけ、2015 年から市を挙げて取り組んでいるのが「川崎水素戦略」です。

<篠原>
「東日本大震災以降、エネルギーのCO2排出抑制が課題となるなか、クリーンなエネルギーとして水素の活用が期待されるようになりました。また、水素は化石燃のように発電時にCO2が発生しません。川崎市ではこれらのメリットと、水素を活用してきたこれまでの実績、そして地の利を活かし、『未来型環境・産業都市』の実現をめざしています」


クリーンエネルギーを川崎臨海部から

地球温暖化を防ぐために、いま、世界中でカーボンニュートラル(注1)の取組が進んでいます。各国はそれぞれ高い目標を設定し、達成に向けて励んでいます。


(注1)カーボンニュートラル:なにかしらの生産活動を行う際、二酸化炭素の排出量から吸収量・除去量を差し引いた合計をゼロにすること


<篠原>
「温暖化対策は、「取り組めればいい」から「取り組まなければならない」に大きく変わっています。いまできる取組以上の、もっともっと大きなイノベーションを起こすことが必要です。その一つが水素の利活用なのです」

なお、水素の活用は、川崎市に留まるものではありません。他の自治体でも取組が進められています。
 

<篠原>
「日本各地でさまざまな動きが見られていますが、首都圏では川崎市がトップランナーになれるよう、たくさんの企業の力をお借りして取り組んでいます。いまはいくつかのプロジェクトが市内に点在している状態ですが、この点がいずれ線となり面となり、皆さんの身近な取組として実感してもらえる展開をめざしています」

川崎臨海部水素ネットワーク構想
(水素を活用したクリーンなエネルギーが利用できる地域の形成)

未来の電力としての水素

川崎臨海部の発電所では現在、合計約830 万 kw/h もの電力が発電されています。篠原曰く、これは、「関東地方の一般家庭の消費量とほぼ同じ、またはそれ以上の発電量」とのこと。
この膨大なエネルギーをCO2 フリーの水素エネルギーへと変えることが、川崎水素戦略の大きな目標です。


<篠原>
「これが実現すれば、川崎市発のクリーンエネルギーが首都圏に住む多くの方のくらしを支えることになります。このインパクトは相当なものです。クリーンなエネルギーと聞いてピンとくる人はまだ多くはないと思います。けれども、これからは「エネルギーを使うならクリーンな方を選びたい」という方向に人々の意識は変わっていくでしょう。これはまさにSDGsにつながる考え方です。こうした未来を見越し、いまのうちからクリーンエネルギーを使える環境を整備することで、市民の皆さまに「川崎市に住んでいてよかった」「クリーンなエネルギーを使えるくらしが送れてうれしい」と思っていただける街にしていきたいです」

この大きな目標の達成に向け、また水素社会に貢献していくため、私たちにできることはあるのでしょうか。


<篠原>
「川崎市の水素は、現在、皆さんの家庭から出る廃プラスチックも原料になっています。プラスチックを他の廃品とまとめてしまうと、ただのゴミになってしまいますが、分別することで地球を守る資源へと変わります。これを意識していただくだけでも、地球環境に良いアクションを起こせるのではないでしょうか」

取組その1 泊まって食べるだけで環境に貢献できる!?世界初の“水素ホテル”川崎キングスカイフロント東急REI ホテル

お話を伺ったのは……

川崎キングスカイフロント東急REI ホテル 販売促進部門 服部 未来 氏

昭和電工株式会社 川崎事業所 企画統括部 マネージャー 高山 翔太郎 氏

多摩川の対岸に羽田空港を臨める、川崎キングスカイフロント東急REI ホテル。キングスカイフロント唯一の宿泊施設として2018 年に開業以来、世界初の“ 水素ホテル”として注目を集めています。


<服部氏>
「当ホテルでは、使用する電気・熱エネルギーのおよそ30%を水素でまかなっています。この水素は供給元の昭和電工さんから、全長約5 キロにもおよぶ地下のパイプラインを通じて敷地内の燃料電池へと送られ、ここで空気中の酸 素と化学反応させて発電しています。このときに生じる熱もまた、客室のシャワーや大浴場のお湯を温めるのに活用しています。年間の発電量は45 万 kw/h。これは1日あたりだと約4 人家族82 世帯分にあたります」


<高山氏>
「“ 水素ホテル”の取組は、水素社会モデルの確立をめざして環境省が2015 年より行っている委託事業「地域連携低炭素水素技術実証事業」の一環です。化学メーカーである当社は2003 年より、アンモニアの原料である水素を発生させるために使用済みプラスチックをリサイクルする事業を行っています。この水素の一部をホテルでエネルギー活用していただく仕組みです。
水素は発電時にCO2 を出さないクリーンなエネルギーですが、「つくる」「はこぶ」「つかう」の三つをつなぐことが難しいと言われています。この事業をとおし、実例を示すことができている点は、循環型社会の実現に向け、前進できているということでもあります。SDGs7番の目標『エネルギー をみんなにそしてクリーンに』にもつながっています」

東急REI ホテル敷地内にある純水素燃料電池『H2Rex™』

『H2Rex™』の側面に設置された電子掲示板。前日に水素でまかなった電力量と湯量が表示されます。

エントランスの大きな自動扉、部屋の灯り、蛇口をひねると出てくる温かいお湯……こうした一つひとつが水素によって稼働していると考えると、なんだか未来のできごとのように感じてきます。しかし、水素の活用はこれだけではありません。
「昨年11 月から、リーフレタスの栽培も始めました」と服部氏。
いったいどういうことなのでしょう。

水素で栽培したレタスを朝食のスープとして提供

1 階ロビーの一画に置かれた茶色の構造物。窓に取り付けられたブラインドを開けた途端、目に飛び込んできたのは整然と並んだたくさんのレタスです。

<服部氏>
「こちらは植物工場です。ここでは昨年11 月より、 レタスの水耕栽培を行っています。水素のさらなる可能性を探りたいと考え、スタートしました」

<高山氏>
「生育のために照射するLED ライト、庫内の温度と湿度の管理の電源に水素が利用されています。一般の方にも資源循環を分かりやすい形で示されています」

ここで栽培された“ 水素レタス”は、現在、毎週金曜日に収穫され翌土曜日の朝食会場で「リーフレタスとキヌアのスープ」として提供されています。レタスのシャキシャキ感の残るコンソメベースのやさしい味わいが、お客様にも好評です。

<服部氏> 
「露地栽培のレタスと比べて甘みが強く、栄養価も高いのが特徴です。天候に左右されないので安定して収穫でき、害虫被害を受けないため無農薬で育てられる、とてもクリーンなレタスです。お客様からは『食べるだけでSDGsに貢献できるなんてすばらしい』といった声をいただいています。レタスの供給過程に興味を持たれ、朝食後に植物工場を見学される方もいらっしゃいます。お客様の身近なところにSDGs の取組があることはホテルとして誇らしく、宿泊を含めた体験を通してお客様に学びの場を提供できることもまた喜びです」

高山氏もまた、「植物工場という“ 見える形”になることで、少しでも当社を身近に感じていただけるとうれしいです」と、顔をほころばせます。

水素レタスの栽培の様子

リーフレタスとキヌアのスープ

あなたにとってSDGs とは

<服部氏>
当ホテルが宿泊先の新たな選択肢になっていることをとても有意義に感じています。これら一連の取組を積極的に発信していくことがホテルの使命であり、私の使命。こうした活動をとおして自身のキャリアを磨くことで女性がますます活躍できる社会にも貢献していきたいです。

<高山氏>
30年前では想像もできないほど、世の中の変化は大きく早くなっています。自然災害も頻繁に起こるようになってしまいました。SDGsに掲げられている目標は、これからの社会を生きていくうえで、避けては通れないものになってきていると感じます。当社でもプラスチックのリサイクルを通じて資源循環と環境負荷低減の取組をさらに広めていけるよう貢献していきたいです。

水素だけじゃない!東急R E I ホテルのS D G s

再生可能エネルギー100%使用のスーパーエコホテル
ホテルのエネルギーを水素とともに担うのは、バイオテクノロジーを活用した食品廃棄物発電と、電気事業者から購入したグリーン電力。これら三つが相互作用しながら電気を安定供給しています。


植物由来の資源を使ったアメニティで環境負荷を軽減
アメニティには、米のもみがらやコンスターチなど、植物由来の資源を使用。アメニティを必要としないお客様が、客室に置かれたグリーンコインを回収コーナーに戻すことで、コスト相応の金額が環境保全活動の基金として充当されています。

取組その2 災害時でもエネルギーを止めない、水素が守る、私たちの暮らし

お話を伺ったのは・・・

東芝エネルギーシステムズ株式会社 水素エネルギー事業統括部 事業開発部
課長代理 熊木 康憲 氏

1 日20 万人にもの人が利用する「武蔵溝ノ口」駅。そのホームに白色をした大きな箱型のシステムが並んで置かれていることを、皆さまはご存じですか?


<熊木氏>
「これは、当社の自立型水素エネルギー供給システム『H2One™』です。ここには駅舎の屋根に設置した太陽光発電設備と水でつくられた水素が蓄えられています。川崎市の水素戦略とJR 東日本さんが駅設備に環境保全技術を導入する『エコステ』の取組により、2017 年から稼働しています」


『H2One™』は普段、ホーム上の照明に電力を供給するほか、夏場はドライミスト、冬場はウォームベンチの電力源として活用されています。また、災害時には蓄えた水素をもとに燃料電池で発電し、帰宅困難者の一時滞在場所となる改札外コンコースの照明やトイレなどの設備に電力を2 日間供給できるといいます。

東芝エネルギーシステムズ株式会社 提供資料

駅や沿線を利用する多くの人の目に触れるところに『H2One™』が設置され、ここからクリーンなエネルギーが供給されていること、またこの取組が川崎市の産業や技術の発展に貢献していることは、熊木氏のやりがいにもなっています。

<熊木氏>
「市民の方の安心安全で住み良い街づくりにつながっている喜びもまた大きいです。いざという時に『H2One™』が役立つことをぜひ知っておいてくださいね」

JR 南武線 武蔵溝ノ口駅 上りホーム

あなたにとってSDGs とは

<熊木氏>
日本で古来より言われている「三方よし」に通ずるものがあると考えています。私たちは世界中で暮らす人たちとともに、将来にわたって人と地球があり続けるために、何が正しいのか、どういう取組をしていくべきなのかを常に考え、行動していく必要を感じています。
当社でも、水素エネルギーを中心としたカーボンニュートラルに向けたさまざまな取組をとおし、持続可能な社会への貢献を続けてまいります。

お問い合わせ先

川崎市臨海部国際戦略本部事業推進部

住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地

電話: 044-200-3738

ファクス: 044-200-3540

メールアドレス: 59jigyo@city.kawasaki.jp

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