川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.33 「今」の力を将来につなげて築く~新しいコンビナートの姿~ カーボンニュートラルへの挑戦
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約100年前、実業家浅野総一郎が始めた埋立事業によって形成された川崎臨海部。川崎市では、このエリアをカーボンニュートラル化することにより、産業競争力の維持・強化を図るため、令和4(2022)年3月に川崎カーボンニュートラルコンビナート構想を策定しました。コンビナートの「新しい姿」を構築すべく、官民が一丸となり、さまざまな取組を始めています。
レゾナックのプラスチックケミカルリサイクルプラント(水素等を製造)
川崎キングスカイフロント東急REIホテルの純水素型燃料電池
戦後の経済復興、高度成長期など日本の経済成長をけん引してきた川崎臨海部。政令市の中で従業者一人当たりの製造品出荷額トップを誇る川崎市、その市内製造品出荷額の74%を川崎臨海部(川崎区)が占めるなど、市内のみならず国内経済を大きく支えるエリアです。
一方で、川崎市の温室効果ガスの73%が川崎臨海部から排出されており、今なお温室効果ガスの排出については、課題を残しているのが現状です。
この課題の克服に向けて、川崎市と川崎臨海部の企業は、カーボンニュートラル化に向けた取組を進めています。
全国に先駆け「川崎水素戦略」策定し、時代に即したさまざまな施策を展開
川崎市は従来、低炭素社会の実現に向けて先進的な考え方を持っていました。日本政府が「水素基本戦略」を策定したのは平成29(2017)年のこと。これは世界で初めてとなる水素の国家戦略ですが、川崎市では、その2年前となる平成27(2015)年3月に「水素社会実現に向けた川崎水素戦略」を策定し、水素エネルギーの積極的な導入と利活用による「未来型環境・産業都市」の実現を目指してきました。
令和2(2020)年2月に「脱炭素宣言」、11月に「川崎市脱炭素戦略」を掲げるなど、新たな施策について明文化・実行する一方、過去に策定した計画についても時代の変化に即した見直し、改定を進めてきました。平成30(2018)年3月に策定した「川崎市温暖化対策推進基本計画」は令和4(2022)年3月、川崎臨海部の産業競争力強化について取りまとめ、同じく平成30年に公表した「臨海部ビジョン」を令和5(2023)年6月に改訂し、ともにカーボンニュートラル社会の実現に向けた色をより強めた内容としています。
これまでの臨海部をモデルチェンジして新たなコンビナートを構築する「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」
このように、脱炭素化の動きが加速する中で、令和4(2022)年3月に策定されたのが「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」です。現在の川崎臨海部は、石油や化学、鉄鋼、電力を主要産業とした化石燃料中心の産業エリアであり、エネルギーや素材等を首都圏に供給する重要な拠点となっています。この機能を踏まえながら、構想では、2050年の川崎臨海部の将来像をイメージ化し、その実現に向けた3つの取組の方向性を示しています。
カーボンニュートラルコンビナートの構築に向けさまざまな組織や地域が連携・協力体制を強める
川崎臨海部のカーボンニュートラル化は、立地企業や近隣地域、国など関係する組織や機関と連携しながら進めていく必要があります。川崎市では、協議会の設立や協定の締結など、さまざまな形でステークホルダーとの関係強化を進めています。
(1)企業間連携の推進:官民の連携組織として「川崎カーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会」「川崎港カーボンニュートラルポート形成推進協議会」を設置し、企業間連携によるプロジェクト創出の取組などを実施。加えて、ENEOSや川崎重工等、関係企業との連携協定の締結も進めている。
(2) 地域や国との連携推進:東京湾岸地域(横浜市及び大田区・東京都)と、水素利用を中心とした連携協定を締結。周辺自治体との連携による水素需要の規模を拡大、規制や課題などへの対応の共有、川崎市の取組を他地域に波及させるというシナジー効果を狙う。
【周辺自治体との協定に共通する連携事項】
※細部については差異あり
・川崎臨海部における水素の利用拡大に関すること。
・ 川崎臨海部を核とした周辺地域への水素及びそれに由来するエネルギーの供給に関すること。
・ これらを実現するための調査・実証事業等の実施、水素利用の普及啓発に関すること。
令和5(2023)年6月1日 大田区、東京都との連携協定締結時の様子
左 : 福田市長 中 : 小池都知事 右 : 鈴木大田区長
(3) 企業や組織の立地誘導:土地利用転換事業※等との連携や、投資促進制度の活用により、低未利用地等(空き地など)へのカーボンニュートラル関連施設や研究機関を誘致。※ vol.32参照
さまざまな企業や組織が有するノウハウや意見を生かしながら、カーボンニュートラル化をけん引するモデル地域を形成し、日本の脱炭素化をリードするエリアを目指します。
カーボンニュートラルに関する有識者や先進企業が集結
川崎カーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会
令和4(2022)年5月、川崎市はカーボンニュートラルに向けた企業間連携のプラットフォームとして、「川崎カーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会(CNK)」「川崎港カーボンニュートラルポート形成推進協議会(CNP)」を設立しました。
※川崎市ではコンビナート(K)とポート(P)の検討範囲・参画企業がほぼ同一のため、CNK・CNPの協議会を同一メンバーで同時開催
協議会は、福田市長を会長に学識会員として有識者、オブザーバーとして関係省庁や自治体が参加しているほか、川崎臨海部に主要な拠点を持つ企業(立地企業)及び立地企業及びそれらの企業と連携してプロジェクト等を行う企業を加入企業として構成されています。コンビナートのカーボンニュートラル化に向けた官民協議会としては国内最大規模となり、2023年9月時点で84社2機関が参画しています。
協議会の下にはテーマごとに部会が設置され、平成25(2013)年8月設置された「京浜臨海部水素ネットワーク協議会」※とも連携しながら議論を進めています。
※令和4(2022)年6月に「川崎臨海部水素ネットワーク協議会」から改称
令和5(2023)年9月15日に開催された第4回協議会の様子
レゾナックと川崎重工が 「川崎地区での水素発電事業開発にかかる協業の覚書」を締結
2023(令和5)年11月、株式会社レゾナックと川崎重工業株式会社が2030年頃の水素利活用を見据えた「川崎地区の水素発電事業開発にかかる協業の覚書」を締結しました。川崎臨海部に液化水素受入基地の建設が予定されている中、両社は、同じ川崎臨海部に立地するレゾナック川崎事業所で、水素発電の協業検討を開始。海上輸送を通じた大規模な水素調達に適しているという地の利を活用し、カーボンニュートラルコンビナートの核となる水素発電事業の開発に関して、事業スキーム・発電システムの仕様・水素等の供給方法などについて調査・検討を行っていきます。
株式会社レゾナック(レゾナックグループ)
半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開する化学会社。2050年向けて水素などクリーンな燃料への転換を推進することでカーボンニュートラルの達成を目指している。
川崎重工株式会社
2010年からカーボンニュートラルの切り札である水素に着目し、技術開発を進める。2022年2月には、世界初の液化水素運搬船による日豪間の海上輸送荷役実証を完遂、液化水素サプライチェーンの構築が可能であることを証明。
左:川崎重工業株式会社 原田執行役員
右:株式会社レゾナック原理事(当時)
川崎臨海部がオーストラリアからの水素の受入地に選定
2050年のカーボンニュートラル実現に向けた政府の取組として、「液化水素サプライチェーンの商用化実証」事業が進行しています。大規模な液化水素の海上輸送技術を世界に先駆けて確立し、国際間で上流から下流までの液化水素サプライチェーンを実証するという大型プロジェクトにあたり、令和5(2023)年3月、川崎臨海部がオーストラリアからの水素受入地として選定されました。
カーボンニュートラルコンビナートの核となる水素供給の拠点確立を目指し、今後商用化に向けたさまざまな取り組みが進められる予定です。
漫画で育む アントレプレナーシップ ~若い世代に「起業家精神」を分かり やすく伝える~
キングスカイフロントに立地する神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科の島岡未来子教授等と川崎市が協力し、中学生等を中心とした世代にアントレプレナーシップ※への関心を高めることを目的とした漫画「未来への扉 アントレプレナーシップ入門」を作成しました。
身近な事例を題材にしながら、一人ひとりがチャレンジ・行動することの大切さを漫画形式で分かりやすく説明しています。
1月には、川崎市立高校附属中学校の2年生を対象に、この漫画を活用したワークショップも実施しました。
是非、ご一読ください。
※アントレプレナーシップ(entrepreneurship):「起業家精神」。
具体的には、課題を見つけ出し、解決の方法を考え、チャレンジ・行動する力を言う
川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.33
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ファクス: 044-200-3540
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