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川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.31  市制100周年に向けて~川崎臨海部100余年のあゆみ(3)~

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株式会社デイ・シイ川崎工場

INTERVIEW  株式会社デイ・シイ(太平洋セメントグループ)

浅野総一郎のDNAを礎に資源循環型社会を目指す

 令和6(2024)年に市制100周年を迎える川崎市。本ニュースレターでは、この100年間に川崎臨海部が果たしてきた役割について、立地企業インタビューを通じて紹介しています。今回お話を伺ったのは、106年もの長きにわたって操業を続ける株式会社デイ・シイ。川崎臨海部の生みの親と言われている実業家、浅野総一郎を創業者とする同社の川崎工場は、首都圏の臨海部に立地する唯一のセメント工場として、大正から令和まで首都圏のものづくりを支えてきました。自身も技術者であり、川崎市の脱炭素の取組にも賛同していると話す同社代表取締役社長の上野山佳志氏に、操業から現在までの歩みと未来を語っていただきました。

ユーザーのニーズに応えて多種多様なセメント製造が可能な特徴を持つ川崎工場
 デイ・シイの川崎工場は、臨海部である川崎区浅野町に立地しています。地名でもある「浅野」は、同社の創業者である浅野総一郎に由来するもので、大正6(1917)年に操業を始めた浅野セメント株式会社の川崎工場が、同社の前身です。
 「浅野総一郎はいろいろな事業を手掛けていたことで知られていますが、彼の転機は横浜ガス局から産業廃棄物であるコークスやコールタールなどを安く買い取り、それを現在の江東区にあった官営深川セメント製造所に燃料として納めたことにあります。そこでセメント事業との接点ができ、後の深川セメント製造所の払い下げ、そして浅野セメントの設立につながりました。その頃、浅野は渋沢栄一と出会っているのですが、コークスにまみれ、真っ黒になって働く浅野の働きぶりを見て、渋沢が払い下げの後ろ盾をしたというエピソードからは、浅野の仕事に対する熱意や実直な人柄がうかがえます」

 その後、社名が日本高炉セメント、第一セメントと変わり、デイ・シイという現在の社名となってから今年でちょうど20年を迎えました。主力事業はセメントと高炉スラグ※関連製品の製造・販売で、特に、セメントにさまざまなスラグ製品を添加して作る混合セメントを強みとしていると言います。
 「首都圏という立地上、周りに産業が多い分お客さまのご要望も多種多様です。ニーズに合わせて製品開発を進めてきた結果、そのラインナップは40種にも上っています。ここまで
多彩な製品を作ることができるセメント工場は非常に珍しく、海外も含め数多くの工場を見てきた私も、この川崎工場ほど多種のセメントを作る工場は大変まれであると思います」
※鉄鋼の製造工程で発生する産業副産物。鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分やコークスの灰分が、石灰石と結合したもの

上野山 佳志氏 株式会社デイ・シイ 代表取締役社長

上野山 佳志氏 株式会社デイ・シイ 代表取締役社長


リサイクル資源の活用で「循環型社会に貢献する」セメント製品を作る
 もう一つの事業の柱が、リサイクル資源の活用を軸とした環境事業です。セメントを作るためにはさまざまな化学成分が必要となりますが、そのうちの一つであるカルシウムを得るためには石灰石を掘削、粉砕するのが一般的で、焼成工程では燃料として主に石炭が使われていると言います。
 「川崎工場のもう一つの特徴は、リサイクル資源をセメントの原料や燃料として活用している点です。周りに人や産業が多く存在し、リサイクル資源を容易に収集することができるというのは、立地面の大きなメリットです。我々が収集しているリサイクル資源の中には、セメントを作るのに必要なカルシウムやアルミニウム、シリカ、鉄などが含まれており、川崎工場にはそれらのリサイクル資源をうまく使いこなす設備が整えられています。リサイクル資源の活用は逼迫する最終処分場の延命につながり、循環型社会に大きく貢献しています」

 そして、環境事業にはもう一つ大きな思いがあると上野山社長は言います。
 「浅野総一郎は、明治の時代から『廃品利用の事業化』を実現してきました。操業から106年を迎えた今でも、彼の先進的なDNAをしっかりと引き継いでいるということは、我々の誇りでもあります」
 川崎工場で作られるセメントは、セメント1トンあたりに対する産業廃棄物、前述の高炉スラグや石膏といった産業副産物の使用も含めて、その原単位※が日本一。低炭素化にも大きく貢献している工場です。
※セメント1トン当たりの使用量

サスペンションプレヒーター付ロータリーキルン

サスペンションプレヒーター付ロータリーキルン


さらなる100年を見据え脱炭素社会の実現と若手の育成に注力
 ビジネスとして環境事業に取り組むほか、太平洋セメントグループとして「川崎カーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会」に参加するなど、脱炭素社会の実現に向けて積極的に活動をしているデイ・シイ。上野山社長は、川崎市の取組について大きな期待を寄せていると言います。
 「脱炭素社会の実現は、企業のミッションです。特に私は技術畑の出身で、そういった取組をやっていたこともあり、カーボンニュートラルに関しては非常に強い思い入れがあります。2年ほど前にグループ企業から今の立場となりましたが、川崎市はカーボンニュートラルに対して非常に先進的な取組を行っていると強く感じて共感を持たせてもらっています。人間が活動する限り、炭素の存在は必ず付いて回るので『炭素循環』は欠かせないと思います。それに『水素社会の実現』と『エネルギーの地域最適化』を合わせた三位一体でカーボンニュートラルを実現しようという市の『カーボンニュートラルコンビナート構想』は本当に理想的だと思います。協議会でその説明を聞いた時、私は涙が出るほど感動しました。市の取組を応援するとともに、我々企業も一緒になってアクションを起こしていかなければと強く感じています。企業活動を続けていくためには、若い人材の育成が不可欠です。学生の企業訪問やインターンなどを受け入れながら、川崎臨海部で働きたいと思う若者を増やしていけるよう、これからも努力していきたいと思います」

株式会社デイ・シイ(太平洋セメントグループ)
 「日本のセメント王」浅野総一郎が興した「浅野セメント(株)川崎工場」として1917年に操業を開始。首都圏を中心に、セメント及びスラグ製品の製造、リサイクルを中心とした環境事業、不動産事業を展開しています。産業廃棄物や副産物を再資源化して製品を製造する技術を強みに、建設資材の総合サプライヤーとして、環境負荷の低減や低炭素社会、循環型社会への形成に向け、積極的な企業活動を行っています。

川崎臨海部の研究開発機能を強化! 研究所等の新設を支援する「新たな投資促進制度」がスタート

産業構造の変化に合わせて新たな時代を迎える川崎臨海部
 川崎臨海部では、立地企業による生産設備へ巨額の投資が行われており、市内の償却資産の約半数が臨海部に集中しています。川崎市の経済を支えるエンジンともいえる臨海部ですが、主力事業である基幹産業の国内需要の減少やそれに伴う業界再編といった産業構造の転換、設備の老朽化等、立地企業を取り巻く環境は大きな変化の波にさらされています。
 川崎臨海部では、新たな土地の利活用や2050年のカーボンニュートラル化への対応など、エリア全体の機能の転換が求められています。それを推進するためには、研究開発機能を中心とした戦略拠点の形成が不可欠です。
 川崎市では、「投資促進」と「人材確保」の2つの視点から
 (1)規制緩和
 (2)財政支援
 (3)総合的な相談体制
 (4)人材育成
 (5)就業環境の改善
の5つの柱を立て、これらを総合的に推進することで川崎臨海部の産業競争力の強化に取り組んでいます。投資促進においては、令和3(2021)年から立地企業の設備投資に対する補助金及び土地利用の整序化(規定する企業等への敷地売却)に対する奨励金の交付などの施策を行ってきました。加えて、令和5(2023)年3月に、川崎臨海部の中で戦略的に土地利用を推進する地域を対象に、研究開発機能を中心とした拠点形成を支援する「川崎臨海部研究開発機能強化補助金制度」を策定、4月より運用を開始します。


県内他都市よりも高い補助率を設定し、企業誘致を推進

 新たな制度は、川崎臨海部の持続的な発展に向けて研究開発拠点の形成を目的に、川崎臨海部の中で土地利用計画を策定するなど戦略的に土地利用を推進する地域を対象としています。
 支援対象は
 (1)研究所等を新設し、自らが研究開発等を行う事業者(自社活用型)
 (2)研究用の共用機器等を有する賃貸R&D施設を新設する事業者(賃貸R&D型)
 (3)本制度を活用し新設した賃貸R&D施設に入居する事業者(テナント事業者型)
で、(1)に該当する事業者に対しては、同様の立地誘導制度を持つ県内の他都市と比較して、研究所に対する高いインセンティブ(補助12%)で最大20億円を支援します。
 目標投資額は、令和5(2023)年度からの5年間で420億円。
 川崎市では、積極的な投資により、臨海部の競争力強化を進めてまいります。


市内高校生と臨海部企業をマッチング 川崎臨海部を舞台にキャリアデザイン


川崎臨海部について学びながら将来のイメージを描く

 川崎市では、川崎臨海部の企業と市内高校が連携した体験型プログラム「川崎臨海部しごとスタイルプログラム/インターン(しごスタ)」を推進しています。このプログラムは、臨海部の立地企業とそこで働く人々の姿を地元高校生が実際に見て、知って、体験できる機会を通じ、シビックプライドを育みながら将来働くイメージを持つことでキャリア形成を支援するとともに、臨海部企業の活動PRや人材育成につなげることを目的としています。こうした取組を通じて長期的な川崎臨海部のブランディングも目指しています。
 しごスタは1年生向けプログラムと2年生向けインターンの2段階で実施し、1年生向けプログラムは4つのプロセスで構成しています。
  (1)企業が学校に出向く「ブース出展」
  (2)生徒が企業を訪問する「見学・体験ツアー」
  (3)生徒の体験を「アウトプット・発表」
  (4)予習復習や学習メモに活用するブックレット
 工業系5科と理数1科を有する市立川崎総合科学高校をモデル校にスタートしており、試行2年目となる令和4(2022)年度は、事前オリエンテーションを経た同校1年生がプログラムに参加しました。
 10月のブース出展では校内の各教室が説明ブースに様変わりし、モニターやパネルを使って臨海部の各産業や自社の取組などについて企業担当者が生徒と直接コミュニケーション。動画や機材の実演に真剣な眼差しが向けられました。
 12月の見学・体験ツアーには生徒計77名が参加し、臨海部企業の高度な技術や壮大なスケールを体感し、体験内容や学び・気付きを発表会で学年全体にプレゼンテーションしました。

高所作業車での設備保守作業を体感

高所作業車での設備保守作業を体感


参加生徒の9割近くが「満足」  将来働くことをリアルに実感
 生徒のアンケートでは、全体の感想として87.1%が「とてもよかった」「よかった」と回答。「自分が働く姿やなりたい大人をイメージできた」「会社や社会の中で仕事がつながっていることを理解した」との感想のほか、「今まで素材や部材を気にしたことはなかったが、見学後はなんだか世界が変わって見える」とBtoB企業が多い川崎臨海部ならではの声もあり、生徒がさまざまな角度から学び・刺激を得ていることが見て取れます。教員からも「生徒が自分たちの進路に真剣に向き合うようになった」との声が寄せられています。
 プログラム参加生徒のうち希望者は、高校2年次に「しごとスタイルインターン」に応募できます。夏休み期間中にインターンシップとして企業活動に参加することで、生徒が自らのキャリアをデザインする力を身に着け、将来の選択肢の幅を広げています。

今年1月に行われた表彰式の様子

今年1月に行われた表彰式の様子


全国表彰にも選出、より多くの協力企業を募集中
 しごスタは文部科学省と経済産業省が主催する「第11回キャリア教育推進連携表彰」の奨励賞を受賞しました。この表彰は、学校関係者と地域・社会や産業界の関係者が連携・協働してキャリア教育に取り組む先進事例が表彰されるもので、勤労観・職業観の醸成と学習意欲を喚起し生徒のキャリア形成を支援している点が評価されました。

 川崎市では、しごスタに御協力いただける臨海部企業を募集しています。
 地元・川崎臨海部とそこで働く人々について学びながらキャリアをデザインする本プログラムを通じ、企業の皆さまとともに次世代を担う力を育て川崎臨海部の持続的な発展につなげていきたいと考えています。

川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.31

お問い合わせ先

川崎市臨海部国際戦略本部事業推進部

住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地

電話: 044-200-3634

ファクス: 044-200-3540

メールアドレス: 59jigyo@city.kawasaki.jp

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