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川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.32  川崎臨海部の描く未来予想図~新たな100年へ~

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株式会社デイ・シイ川崎工場

JFEホールディングス株式会社/JFEスチール株式会社

 川崎臨海部に立地する鉄鋼メーカー、JFEスチール東日本製鉄所(京浜地区)の高炉等休止に伴い、同社の私有地である川崎区扇島地区の土地利用転換の取組が進んでいます。扇島地区のほか、周辺地区と南渡田地区を合わせて、約400ヘクタールもの大規模土地利用転換は、川崎市制100年の中でも過去に取り組んだことのないビッグプロジェクト。未来を見据えた活用方法について、有識者からの意見聴取や国との調整、パブリックコメント(意見募集)を経て土地利用方針を策定し取組を進めています。この度、川崎市は明治大学・生田キャンパスで学ぶ大学生・大学院生7人を現地に迎え、JFEスチール東日本製鉄所(京浜地区)の工場見学とワークショップを開催しました。若い人の目には、臨海部の未来がどのように映ったのでしょう。同イベントの模様をレポートします。


持続的な発展に必要なのはカーボンニュートラル実現と次世代産業の創出

 当日のタイムスケジュールは3部構成。川崎市職員とJFE社員から最初に概要説明があり、その後、JFEスチール東日本製鉄所内を見学。実際に広さやものづくりの現場を体感した後、学生による土地活用のアイデア出し・発表をするワークショップが行われました。

 まず川崎市職員からは、土地利用方針策定に至った背景とこれまでの経緯が説明されました。

 「近年、グローバル規模で競争が激化するなど鉄鋼産業を取り巻く環境は厳しくなっており、そうした中で、JFEは2020年3月に京浜地区・扇島の高炉等の休止を発表しました。長年本市の産業をけん引してきたJFEの高炉等休止は、本市の施策に多大な影響を及ぼすことから、2021年2月にJFEと川崎市の間で協定を締結し、相互に協力しながら土地利用の検討を進めてきました。土地の持つポテンシャルが非常に高く(コラム参照)、国も交えて議論を行った上で、2023年8月に土地利用方針を発表。翌月の9月16日に、高炉等が休止したというのがこれまでの経緯です」。

 土地利用方針では、カーボンニュートラルの実現と同時に次代の柱となる新たな産業の創出を目指し、これによって川崎臨海部の持続的な発展につなげ、市民生活を支えるとともに、国の課題解決に資する効果的な土地利用転換を実現することを目的に掲げています。


鉄づくりで日本に貢献してきたこの土地を次の100年につなげることもJFEの使命

 続いてJFEスチールの下山氏から、同社が今後目指す方向性の説明がありました。

 「JFEは、前身の日本鋼管が1912年に川崎の渡田の地で創業して以来工場を拡張し、川崎臨海部から国内外に高級鋼を供給してきましたが、鉄鋼事業を取り巻く国内外の構造的な変化に対応し、国内の生産体制を再構築することになりました。京浜地区で行っていた製鉄プロセスのうち、鉄鉱石などの原料を溶かす高炉を含めた上工程と呼ばれるプロセスを休止。今後は当社の他の地域の製鉄所から運び込んだ半製品を、お客様のニーズに合わせた製品に仕上げることになります。この生産体制の大きな変更に合わせ、エネルギーの転換や量から質への転換も進めていきます。例えばカーボンニュートラルに向け、製鉄所内にある発電所のエネルギーを将来的には水素を使えるようにし、『クリーンな電力で製造した鉄鋼製品』という付加価値を付ける。また最新技術を用いた強度の高い製品を生産することで、構造物の耐震性向上などに役立てる。JFEスチール東日本製鉄所京浜地区は、これを機に次の100年も見据えた新しい都市型製鉄所に生まれ変わります」。 

下山 文雄氏 JFEスチール株式会社 東日本製鉄所 総務部 総務室長

下山 文雄氏
JFEスチール株式会社 東日本製鉄所 総務部 総務室長

 

 JFEホールディングスの池内氏は土地利用転換の課題として、(1)土地利用に関する法律の規制緩和 (2)交通アクセスの整備 (3)開発コストの3点を挙げ、行政の協力や国内外の投資の呼び込みが必要だと訴えた上で、JFEの思いを次のように話しました。

 「JFEには、100年以上の鉄づくりを通じて京浜工業地帯や日本を支えてきた自負があります。日本の産業に貢献してきたこの土地を次の100年につなげていくことも、また我々の使命です。産業立地や雇用の創出を通じて、持続的な社会の発展に貢献していきたいと考えています。川崎市や国、近隣立地企業とも協力をしながら、2050年に街の概成を目指します」。

池内 淳氏 JFEホールディングス株式会社 京浜臨海土地活用検討班 主任部員

池内 淳氏
JFEホールディングス株式会社
京浜臨海土地活用検討班 主任部員


ワークショップでは先端技術を絡めたさまざまなアイデアが

 概要説明の後の工場見学では、学生から口々に「想像以上に広い!」「高炉の迫力に圧倒される!」といった感嘆の声が。その後のワークショップでは、「最先端レベルの取組を行おうとしていることが川崎市民としてうれしい」という感想や、若者ならではの柔軟な発想、自身の専門分野に絡めたアイデアなど多彩な意見が発表されました。

  • 扇島はJFEの私有地で実験しやすい環境が整っているので、空飛ぶクルマの交通拠点にし、羽田空港と結んではどうか
  • 自分は微細藻類からバイオプラスチックを作る研究をしている。藻類は生きていく上で鉄を必要としCO2を吸収するので、藻類を用いたバイオエネルギーでカーボンニュートラルを実現してほしい
  •  巨大スタジアムを作って川崎市をスポーツが盛んな街にし、川崎オリンピックができたら面白い
  •  最先端技術が社会実装されるまで、かなりタイムラグがあると常々感じている。そこで扇島を特区にし、さまざまな先端技術が体験できる場にしてはどうか
  • 農業を専攻している。土壌調査は必要だが、可能なら広大な土地を活用しセンサリング技術やロボット技術などを使って、今までの農業とは全く違う無人化された農業を始めてはどうか
  • 日本のものづくりに憧れを持ち、カナダから移住してきた。高炉は産業技術を伝える重要な建造物なので、残して公園として整備し、観光資源にしてほしい

 ビジョンや課題を的確に捉えた学生の皆さんのご意見を、川崎市では今後の土地利用転換の議論に生かしていきます。

圧延工程(鋼片をさまざまな形状・サイズの鋼材に加工する工程)を見学

ワークショップの様子

土地利用転換が行われる場所は、ココ!

 〜数々のポテンシャルがあり、未来志向で活用を検討〜 

 土地利用転換の対象範囲は図の通り。高炉休止によって用途未定となる扇島南地区(川崎側)が面積としては一番大きく、222ヘクタール。ここだけで東京ディズニーリゾートがすっぽり入る大きさです。

 その他に扇島北、南渡田、池上町、扇町、水江町の各地区を加え、広大な川崎臨海部の1/7となる合計約400ヘクタールを2050年までに段階的に整備していくことになります。

 広大な敷地というポテンシャルのほか、羽田空港に近接し、大型船の入港が可能な国内屈指の「大水深バース」を有するなど陸海空の結節点となり得ること、周辺にエネルギー産業、化学産業、キングスカイフロントの研究機関等が集積していることなどの立地特性があります。

 特に扇島南地区の東側の区画は、鉄の原料を野積みするヤードだったため構造物が比較的少なく、ここを「先導エリア」と位置付け、「大水深バース」を生かして先行的に土地利用を進めていきます。

先導エリアの南側はカーボンニュートラル・エネルギーゾーンとして水素等供給の拠点形成を目指します。また北側はGX、DXによる効率化、高付加価値化を実現した高度物流拠点や港湾物流拠点を形成し、2028年度から一部土地利用を開始する予定です。

土地利用転換 対象範囲

土地利用ゾーニングのイメージ

臨海部ビジョンの「リーディングプロジェクト」を6月に改定

 川崎市では、川崎臨海部が目指す30年後の将来像を示す「臨海部ビジョン」を平成30年3月に策定し、直近10年以内に先導的・モデル的に取り組む「リーディングプロジェクト」を推進しています。策定から5年が経過し、臨海部を取り巻く環境が大きく変化していることから、これまでの成果を踏まえ、リーディングプロジェクトの改定を6月に行いました。
 新たなリーディングプロジェクトでは、カーボンニュートラル化された次世代型のコンビナートへの変革や、研究開発機能を中心とした成長戦略拠点の形成、我が国の国土形成計画の一角を成すような土地利用転換の取組を進めてまいります。また、川崎臨海部の持続的な発展を支える交通機能の強化を図ってまいります。
 川崎臨海部に立地する皆様と連携を深め取組を進めてまいりますので、引き続きご協力よろしくお願いします。

https://www.city.kawasaki.jp/590/page/0000136484.html

扇島地区土地利用概成時のイメージ

殿町夜光線にて、路上駐停車抑制に関する社会実験を実施中

 大型車の荷待ちやドライバーの休憩などによって路上駐車が恒常的に発生している殿町夜光線において、路上駐車の抑制対策に関する社会実験を行っています。期間は11月9日から3月8日までの4カ月間。駐車禁止区間の周辺に4箇所の仮設トラック待機所を設置し、停車車両をそちらに誘導することで路上駐車を減らす試みで、待機所の利用状況を把握し、今後の対策につなげます。
 路上駐車禁止区間や仮設待機所などの詳細はウェブサイトをご確認ください。

https://sites.google.com/view/kawasaki-4-city/外部リンク

社会実験のお知らせ(チラシ)

キングスカイフロントA地区の「殿町プロジェクト」が 完成しました

 川崎市と大和ハウスがキングスカイフロントA地区内で2014年から開発を進めてきた「殿町プロジェクト」が完成し、11月14日にまちびらきセレモニーが開催されました。
 このプロジェクトは「賑わい・交流機能」の創出をテーマに、約46,000平方メートル(東京ドームと同規模)の敷地に研究施設4棟とホテルを開発したものです。研究施設には11月現在、14の企業・機関が入居し、医薬品や医療機器、再生医療等のライフサイエンス関連の研究を行っています。また川崎キングスカイフロント東急REIホテルは、世界初となる使用済みプラスチック由来低炭素水素とバイオエネルギーを活用した、環境に配慮したホテルとなっています。
 「殿町プロジェクト」は東京国際空港(羽田空港)から多摩川スカイブリッジ経由で、車でわずか5分の立地。羽田空港周辺地域との連携強化により、ヒト・モノ・ビジネスの交流が活性化することで、川崎の国際競争力の強化が期待されています。

キングスカイフロントA地区 「殿町プロジェクト」

キングスカイフロントA地区
「殿町プロジェクト」

まちびらきセレモニーの様子

川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.32

お問い合わせ先

川崎市臨海部国際戦略本部事業推進部

住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地

電話: 044-200-3634

ファクス: 044-200-3540

メールアドレス: 59jigyo@city.kawasaki.jp

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