川崎臨海部ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.36 令和9年度に「まちびらき」を予定! 南渡田地区で進む新たな産業拠点形成
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JFEスチール東日本製鉄所の高炉等休止に伴い、川崎臨海部では同社所有の400haの土地利用転換プロジェクトが進められています。中でも先行して進められているのが、南渡田地区約52haの再開発。新たな土地利用については戦略的な機能誘導が必要なことから、川崎市では「クライメートテックを社会実装するスケールアップ拠点」をテーマに据え、日本の次の100年を支える産業拠点の形成をめざしています。「クライメートテック」とは、世界的な気候変動の問題を解決するため、CO2排出量の削減や地球温暖化の影響への対策を講じる革新的なテクノロジーのこと。その実現には分野横断的な先端技術の掛け合わせが必要で、研究開発機能の集積や産学連携、オープンイノベーション*がカギになると言われています。この点で、臨海部にはそれぞれに卓越した技術を有する石油精製・化学、エネルギー、鉄鋼などのマテリアル(素材)関連企業がすでに集積しており、ここにアカデミアやスタートアップ企業、素材を最終製品化する企業などが加わることで、新たな価値創造の実現が期待されます。
また革新的技術は製品化され、社会実装されなければ意味がありませんが、南渡田地区は広大な土地のほとんどが工業地域または工業専用地域に指定されているため、研究開発のみならず、実証・スケールアップ・生産といった製品サイクルを一気通貫で迅速に行える高いポテンシャルもあります。
気候変動という世界的な社会課題の解決に挑戦しつつ、新たな産業創造をめざす新生・南渡田地区は、令和9年度の北地区北側の「まちびらき」を皮切りに始動します。
*オープンイノベーション : 従来の自前主義に代わり、組織外の知識や技術を積極的に取り込む開発手法
南渡田地区北地区北側の完成イメージ
不動産デベロッパーのヒューリックは、大規模土地利用転換の先陣を切る南渡田地区・北地区北側(5.6ha)の開発事業パートナーです。同社バリューアッド事業部 産業インフラ室の田蔵浩二参事役に、開発プランの概要と目指す姿について伺いました。
立地と研究施設開発に感じる将来性
――なぜ、南渡田地区の開発に手を挙げたのでしょうか。
当社はこれまで都心のオフィスビルや商業施設を中心に不動産事業を展開してきましたが、近年は日本を取り巻く環境の変化を先取りし、物流倉庫やデータセンターなど新たな領域にも事業を拡大しています。そのような中、研究開発を行う企業様の関心が高まっていることから、研究施設の開発を手掛けたいと考えていました。
参画を決めた大きなポイントは、「殿町キング スカイフロント」や「新川崎・創造のもり」など研究開発都市の形成で実績を持つ川崎市との協業であり、将来性があるプロジェクトだと感じたところです。
立地にも大きな魅力があります。 南渡田地区は産業道路と首都高速道路、東海道貨物線を境に住宅エリアと工業エリアが完全に区分けされており、首都近接の好立地にありながらも、研究開発を自由に行える環境が整っています。南側には今後、大型実証実験や量産拠点として開発が見込まれる広大な土地が控え、さらなる発展も期待できます。さらに、都心にも羽田にも近く、JR浜川崎駅から徒歩3分、川崎駅からのバス便も充実しているなど交通利便性にも優れており、他県や国外からもアクセスしやすく、研究者が集いやすい環境です。首都近接で研究自由度が高く、さらに研究から量産まで一気通貫で行える、各所・各国から研究者が集いやすい拠点。これほどの立地は極めて希少です。
このたび事業パートナーに選定いただき、JFEホールディングス様が約100年にわたり日本の産業の発展を牽引してきた歴史あるこの土地で、日本の将来を担う新たな産業都市形成に関われることに、担当者一同ワクワクしています。
人の交流が生まれる空間をつくり、 オープンイノベーションを促す
――開発プランの概要と、特長についてお話しください。
川崎市が策定した「南渡田地区拠点整備基本計画」に基づき、主にマテリアルに関連する企業・アカデミア・研究機関を幅広く誘致できるよう計画を進めています。メインとなるのは「研究棟」で、人の動線が交わる巨大エントランス空間を「コミュニティの場」と位置付け、イベントを開催できるオープンな空間やコミュニケーションスペース、会議室などの共用機能を集中させます。メイン棟で、ワンフロアが約6,000平方メートル、延床面積が約60,000平方メートルという規模だからこそ可能な仕掛けで、ここに入居する研究者同士の交流が自然に生まれる場を設けることで、オープンイノベーションを促す狙いがあります。
また、既存の研究都市に不足している機能をリサーチし、研究者の方々の食・住を支えるための「商業棟」と「居住棟」を計画しました。商業棟にはスーパーを中心に飲食店なども配置し、昼食はもちろん朝食・夜食需要にも対応できるよう計画を進めています。居住棟は他県や国外から来街し、一定期間滞在する研究者向けの社宅や寮として活用いただきます。オフィスビルや商業施設で培った私たちのノウハウを生かしつつ、働く方々の「ウェルビーイング」を叶える機能を盛り込みました。
ヒューリック株式会社
左から同室部長代理 占部進也氏、田蔵氏、主任 久津輪佳奈子氏
都心の駅至近の好立地を中心にオフィスビルや商業施設等の不動産賃貸事業を展開する、1957年創業の総合デベロッパー。川崎市内では、南渡田地区とも近いイトーヨーカドー川崎店の敷地にて「LICOPA(リコパ)」という地域密着型の商業施設を今年3月にオープン。近年は日本を取り巻く環境の変化に対応し、物流施設、データセンター、ホテル・旅館、こども教育事業などにも事業領域を広げています。
社会課題の解決について 拠点形成の観点から貢献を目指す
――今後の役割についてのお考えは。
南渡田が世界中から技術やアイデアを求めて研究者が集まるような拠点になるよう、まずは令和9年度の「まちびらき」に向け、建物・空間・仕組みづくりを進めます。
ただ、当社の役割は、「ハコを作っておしまい」ではありません。まちびらきの後も、オープンイノベーションを促すための交流のサポートを継続的に行っていきます。開発や技術革新のスピードが求められる時代においては、閉鎖的な空間で研究を行うよりも、レンタルラボを活用したオープンイノベーションをめざす動きが加速するでしょう。その仕組みを南渡田地区で確立していきます。
クライメートテックをはじめとする革新的な技術が創出されるリサーチパークを形成し、気候温暖化問題やカーボンニュートラルなどさまざまな社会課題の解決につなげる。その拠点形成に当社が貢献できればと考えています。
[進むJFEスチールの跡地利用] 扇島では「液化水素サプライチェーンの商用化実証」に向け、土地賃貸借契約が締結
扇島の土地利用転換も、その第一歩が踏み出されています。日本水素エネルギー(株)が実施する「液化水素サプライチェーン商用化実証」を目的に、JFEスチール(株)が東日本製鉄所京浜地区に所有する扇島の土地約21haについて、本年7月に、両社の間で土地賃貸借の予約契約が締結されました。この実証は大規模な液化水素の海上輸送技術の確立を目指すもので、扇島を起点に日本の水素社会の実現を先導する役割を果たします。川崎市はこの実証を起点に、大規模土地利用転換の早期実現に向け、引き続き関係者と協力して取り組んでいきます。
【対象地】液化水素の受け入れ基地(21ha)
自動運転バス レベル4実装に向けたプロジェクトを開始!
令和7(2025)年1月から、全国初の都道府県をまたぐルートと川崎駅前を走行するルートにおいて、最先端技術と最新の自動運転EVバス車両を導入した実証実験を行います。
まずは2つのルートで、レベル2での実証実験を重ねます。得られた知見やノウハウを活用し、他のバス路線への戦略的導入や臨海部における自動運転を生かしたまちづくりなどを進め、自動運転技術を活用して交通課題への解決策を横展開できる「川崎モデル」の構築を目指します。自動運転レベル4の実装は、令和9年度を目標としています。
運行ルート
羽田連絡線:全国初!都道府県をまたぐルート! 多摩川スカイブリッジを走行!
川崎病院線:1日30万人以上が利用する川崎駅前を自動運転バスが走行!
令和7(2025)年1月27日(月)頃から10日間、一般の方もご乗車いただける試乗会を開催する予定です。詳細は下記URLからご確認ください。試乗会の詳細が決まり次第、下記URLに申込方法等を掲載します。
お問い合わせ先
川崎市臨海部国際戦略本部事業推進部
住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地
電話: 044-200-3738
ファクス: 044-200-3540
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