【スマホ・タブレット端末版】ニュースレター「KAWASAKI Coastal Area News」vol.29 「市制100周年に向けて~川崎臨海部の100余年のあゆみ」
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市制100周年に向けて 川崎臨海部100余年のあゆみ
産業・環境創造リエゾンセンターは、川崎臨海部の立地企業有志が企業相互、あるいは企業と行政との連携を目指して立ち上げたNPO法人。現在は19社が加盟し、地球温暖化対策、資源・エネルギー循環など、さまざまな課題解決や市民交流に取り組んでいます。川崎臨海部の歴史に詳しい同センターの瀧田浩顧問と小泉幸洋専務理事に、臨海部発展の過程ならびに同センター誕生の背景について、お話を伺いました。
明治末から工場進出が相次いだ川崎臨海部
川崎港を埋め立てて造成された川崎臨海部。工業地域としての発展は明治・大正期に遡ります。瀧田氏は、臨海部発展の立役者として二人の名前を挙げました。
「実業家・浅野総一郎と川崎町長・石井泰助の功績が大きいと言えます。二人は将来ビジョンを掲げ、強いリーダーシップを発揮しました。欧米を視察した浅野は、工業発展のためには港湾整備を含む造成が欠かせないと考え、明治41年に県に埋立申請を行い、浅野町、南渡田町、大川町、扇町などを造成しました。一方、石井は工場招致を町是に掲げ、用地を廉価で斡旋する積極的な企業誘致を行いました」。
内陸部から始まった工場招致は埋立に伴って舞台を臨海部に移し、30余年の間に製鉄、電気、化学、石油、自動車などの企業が工場を建設。東京に隣接する川崎は物流面・人材採用面から立地メリットが大きかったのに加え、臨海部には3つのインフラがあったため工場進出が進んだ、と瀧田氏は解説します。
「臨海部には、港湾・鉄道・電力が整っていました。港湾については、自社の専用埠頭から直接、原材料の搬入・製品の搬出を行える。鉄道は、大師鉄道(現京浜急行大師線)や鶴見線、南武線の支線が次々整備された。電力は、自前の発電所を有していた企業が余剰分を周囲に供給した。工場立地には申し分ない条件が揃っていたのです」。
瀧田 浩 氏
特定非営利活動法人
産業・環境創造リエゾンセンター顧問
戦後は公害問題を乗り越え、環境先進エリアに
昭和初期にかけて発展を遂げたものの、太平洋戦争によって川崎臨海部は灰燼に帰しました。しかし戦後復興のため政
府がまず鉄鋼と石炭の増産に集中投資したため、終戦翌年には臨海部の鉄鋼産業が息を吹き返しました。戦後の臨海部の埋立事業は主に神奈川県や川崎市によって継続され、戦後の造成地区には石油会社や化学メーカーが進出、一大石油コンビナートが形成されました。
ところが昭和20年代後半になると、大気汚染や水質汚濁などの公害問題が持ち上がります。実はこの公害問題への取り組みが、川崎の先進性につながっていると小泉氏は話します。
「臨海部企業は公害を克服する過程で、環境技術に優れた先進企業に脱皮したのです。また、川崎市は平成9年に当時の通産省から、臨海部全エリアを対象とする国内初のエコタウン認定※を受けました。これにより、環境課題を臨海部の企業間連携によって解決する機運が生まれました。この動きが、後のリエゾンセンターの設立にもつながっています」。
瀧田氏も「川崎臨海部の強みは連携にある」と続けます。 「ノーベル賞を受賞したリチウム電池は旭化成の名誉フェローである吉野彰氏が開発しましたが、製品化は東芝の協力のもと行われました。臨海部立地の企業同士の連携が、イノベーションを生んだのです。これこそが川崎の底力だと言えるでしょう」。
※エコタウン:「地域の産業蓄積などを活用し、環境産業の振興を通じて行う地域振興」及び「地域の独自性を踏まえた廃棄物の発生抑制やリサイクルの推進を通じた資源循環型経済社会の構築」を目的とした事業
小泉 幸洋 氏(写真右)
特定非営利活動法人
産業・環境創造リエゾンセンター専務理事
【特定非営利活動法人産業・環境創造リエゾンセンター】
産学官で構成された「川崎臨海部再生リエゾン研究会」が平成13年から2年間の研究活動を経て、「川崎臨海部再生プログラム」を取りまとめました。
このプログラムに携わっていたメンバー有志が平成16年に発足させたのが、NPO「産業・環境創造リエゾンセンター」です。
臨海部立地企業と行政との“リエゾン=連携”により、地域経済の活性化と環境調和型まちづくりに寄与することを目指しています。
川崎臨海部を代表する企業の一つ、JFEスチール。前身の日本鋼管は明治45年に渡田地区で創業し、その後は扇町や水江へ工場を拡張。さらに高度成長期には自社で埋立造成した扇島地区に最新鋭の一貫製鉄所を建設し、川崎臨海部から国内外に高級鋼を供給しています。同社京浜地区所長の古米孝行専務執行役員に、110余年の歴史を振り返っていただきました。
民間初の製鉄所として誕生し、日本の基幹産業として発展
「JFEスチールの前身・日本鋼管が創業した当時、日本には軍需・官需のための官営製鉄所しか存在せず、水道管やガス管など民需の鋼管は輸入に頼っていました。そこに目をつけた創業者・白石元治郎が民間で初の製鉄所設立に動きました。白石は実業家・浅野総一郎の娘婿で、浅野や渋沢栄一の反対を説き伏せ、会社を設立したそうです。浅野が埋立事業を行っていた縁で、川崎の渡田地区で創業しました」。
当初生産していたのは、継目無鋼管。ドイツの技術を導入した継ぎ目のない鋼管は、最高品質を誇っていました。昭和初期に浅野製鉄造船と合併すると、京浜地区で生産する商品ラインナップに造船用や橋梁用の鋼板と鉄筋用の棒鋼も加わりました。生産量の拡大に伴い工場を次々拡張し、昭和30年代には渡田・扇町、鶴見、水江の3地区に製鉄所を擁するまでに。
「しかし工場が分散していると物流効率が悪い。そこで1カ所に集約すべく、扇島の建設計画が昭和44年に持ち上がりました。埋め立てが完了し、高炉に火入れをして生産を開始したのが、昭和51年。稼働以来、累計粗鋼1.8億トンを生産して今日に至ります」。
古米 孝行 氏
JFEスチール株式会社
専務執行役員東日本製鉄所京浜地区所長
臨海部のフロントランナーとして、環境問題にも真剣に取り組んできたといいます。
「扇島の建設にあたっては、生産効率などの経営課題に加え、深刻化していた公害問題への対策を地元自治体と連携しながら進めました。建設予算の実に2割を環境対策に充てたことからも、いかに当社が環境を重視しているかが伝わるのではないでしょうか」。
また同社は、直近の30年間でCO2排出を約20%削減しています。今後はカーボンニュートラルの実現に向け、新たな技術革新により製鉄プロセスの中でCO2削減に取り組むといいます。
「当社には継目無鋼管技術やトーマス転炉の導入など、常に時代の最先端技術を取り入れてきた110年の歴史があります。技術に対するこだわりは我々のDNA。これからもそのDNAを大切に守り続けます」。
次の100年に向け、踏み出す扇島
近年の中国の台頭に伴うグローバル競争の激化などを受けて、扇島の高炉を含めた上工程を令和5年に休止することが決定しています。広大な跡地をどのように活用していくのでしょう。
「エネルギー・環境・社会インフラ分野などにおいて事業を行うJFEエンジニアリングとの連携や、近隣のエネルギー関連企業との連携を検討しています。扇島の岸壁は、20万t級の大型船の入港が可能な水深22メートル。関東でこれだけの水深は他に例がなく利用価値が高いため、これを活用しながら川崎臨海部再開発の新たなものづくりの拠点となるよう、取り組む所存です。またこれまで工場見学などを通じて地域に開かれた企業を目指してきましたが、こうした姿勢を継続し、今後も市と連携しながら川崎の次の100年の歴史づくりに我々も参画したいと考えています」。
【JFEスチール株式会社】
平成15年に日本鋼管と川崎製鉄が経営統合して、JFEスチールが誕生。東西2拠点のうち東の拠点である「東日本製鉄所」は、日本鋼管の本拠地だった「京浜地区」と、川崎製鉄の本拠地だった「千葉地区」の2つのエリアからなり、東京湾を挟む形で立地しています。
京浜地区では、造船・建築・橋梁などを用途とする厚板、自動車・家電などを用途とする薄板・表面処理鋼板及び社会基盤整備などを用途とする溶接鋼管を生産しています。
水素等の次世代エネルギーの利活用拡大へ、横浜市と連携協定を締結
近隣エリアとの連携により水素エネルギー等を広域的に利活用
川崎市は、7月26日、水素等の次世代エネルギーについて連携・協力して利活用を拡大することを目的とした協定を横浜市と締結しました。
川崎市では、今年3月末に策定した「川崎カーボンニュートラルコンビナート構想」で、「地域間連携の推進」を市の役割の1つと位置づけています。また、同構想では、「水素を軸としたカーボンニュートラルなエネルギーの供給拠点」の形成を目指しており、これを実現するため、近隣エリアとの連携を図り、より広域で水素等の次世代エネルギーの利活用を拡大していく必要があります。そこで、4月以降、横浜市と連携強化に向けた議論を深め、協定の締結に至りました。
今後は、水素等の次世代エネルギーの利活用拡大に向け、(1)水素等の供給体制の構築(2)水素等の需要拡大(3)調査及び実証事業等の実施などについて連携していく予定です。また、両市の連携を対外的に示すことで、市域を跨いだ企業間連携によるプロジェクト創出にも取り組んでいきます。
水素エネルギー先進都市として日本のカーボンニュートラル化をリード
日本を代表するコンビナートを有する川崎臨海部には、開発当初からエネルギーの相互融通を行ってきた歴史があります。また、川崎市は、全国に先駆けて水素戦略を策定するなど、水素エネルギーに関する国内有数の先進都市です。立地企業、自治体ともに水素の利活用に早くから取り組むなど、川崎臨海部は水素供給拠点としてのポテンシャルが非常に高いエリアです。
一方、横浜市は国内最大の基礎自治体であり、同市が有する横浜港は日本の一大物流拠点です。官民において水素等の次世代エネルギーの需要が多く見込めるほか、川崎・横浜の両市に立地している企業も多数あることから、協定の締結による両市の連携は、高い補完関係を築くことができます。連携強化によって需要と供給の拡大という好循環を生み出すことは、水素等の次世代エネルギーの供給側企業にとって投資の拡大につながり、需要側企業にとっては価格の低減や安定化をもたらします。加えて、カーボンニュートラルに向けた世界的な潮流が加速する中、国内外における競争力の強化にもつながると期待されています。
横浜市との連携によって、川崎市は国内最大の水素等の次世代エネルギーのサプライチェーンを形成し、日本のカーボンニュートラル化をリードしていきます。
キングスカイフロント夏の科学イベント2022を実施しました!
毎年8月、川崎臨海部の殿町地区にある世界最先端の研究開発拠点「キングスカイフロント」では、主に市内の小学生及び保護者を対象に、サイエンスを身近に感じることができる体験イベントを実施しています。8月10日に実施した今年のイベントでは、キングスカイフロントに立地する15の企業等による出展のもと、21のツアーを催行しました。
当日は、事前申し込みにより当選した131名が、科学実験やVR手術体験、顕微鏡による身近なものの観察など、夏休みの学習に役立つさまざまな企画を体験。参加した小学生からは「将来こんなところで働き、いろいろなことを追求してみたいと思った」また、保護者からは「どの講座も初めて体験することばかりで、子どもたちにとって、すごくいい学びになりました」などの声が聞かれ、子どもたちがサイエンスの魅力を知る貴重な一日となりました。
お問い合わせ先
川崎市臨海部国際戦略本部事業推進部
住所: 〒210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地
電話: 044-200-3738
ファクス: 044-200-3540
メールアドレス: 59jigyo@city.kawasaki.jp
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