生田古墓群 生田8601番地古墓出土火葬骨蔵器
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火葬骨蔵器
生田古墓群 生田8601番地古墓出土火葬骨蔵器 2組4箇
附 鹿角製刀子柄 1本
年代
奈良時代
法量
須恵器身部器高 29.0cm、須恵器蓋部器高 4.5cm
石櫃身部器高 16.0cm、石櫃蓋部器高12.5cm
所有者
川崎市
指定
市重要歴史記念物 平成9年4月22日指定
解説
遺跡は、多摩川に注ぐ平瀬川と、五反田川に面する尾根状台地の南斜面にあって、資料は昭和36年に発見された。有蓋須恵器骨蔵器と石櫃あわせて2組4箇が出土している。
骨蔵器の身部は短頸の薬壷形で、口縁部がやや外反、胴部上半では肩を張った状態でやや角張り、下半はなだらかに底部へ移行する。胴部中央には、幅約1.5cm、長さ3cm程の耳が一対付けられている。突出した耳のやや上部には、幅3mm程のやや太めの条線が一周している。胴部の条線より上部には自然釉が認められるが、熱のため表面がほぼ半分剥落している。条線より下部は、タタキ目の痕跡が顕著である。底部は、高さ8mm程の高台が外傾して付けられている。蓋は、平らたい高台状の紐が付けられている。骨蔵器内の火葬骨から、被葬者は成年(壮~熟年)男性的と鑑定されている(註)。時期は、身部・蓋部とも8世紀中葉頃である。火葬骨に混ざって鹿角製刀子柄が1本発見されている。やや基部を欠くが優品である。表面が焼けているので、遺体と一緒に荼毘に付されたものであろう。
石櫃
石櫃は、火葬骨蔵器から約2m離れた位置から発見された。平面形は長方形で、各面の端をきれいに削り取っている。構造は、身部・蓋部からなり、石質は凝灰岩である。石櫃の外面法量は概要のとおりであるが、内部には身部・蓋部とも直径16~19cm、深さ6~10cm程の抉りがある。
この部分に直接、火葬骨を納めたのか、あるいは火葬骨を入れた骨蔵器を収納したものであろう。蓋部の四隅は、2~2.5cm幅で斜めに面取りされ、頂部は長辺10.3cm、短辺8.8cmの台形に造作がされている。火葬骨の所在は不明。時期は特定しがたいが、おそらく隣接して発見された火葬骨蔵器に前後するものであろう。
鹿骨製刀子柄
須恵器製の火葬骨蔵器は、やや腰高なので時期的には8世紀中葉に下るが、両耳付きの優品である。鹿角製刀子柄が随伴し、骨も成年・男性と鑑定されているので、被葬者は中央から派遣された「刀筆の吏」であろう。石櫃容器は、土師器・須恵器容器が主体的な川崎市域の古墓のなかできわめて希有の存在であり、形態もわかる貴重な事例といえる。
註:百々幸雄氏の鑑定による。
百々氏のご教示によれば、火葬骨の場合、骨が凝縮するので、性の判明は信頼度がおちるという。そのため「◯◯的」という表現にした。
お問い合わせ先
川崎市教育委員会事務局生涯学習部文化財課
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