紙本着色 五趣生死輪図
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紙本着色 五趣生死輪図 1幅
年代
明治25年(1892)
法量
縦294.7cm 横173.2cm
所有者
妙楽寺(多摩区長尾3-9-3)
指定
市重要歴史記念物 平成8年(1996)1月25日
解説
2本の角をもつ無常大鬼が腹前に五趣生死を描いた大きな輪を抱き、上部には虚空に浮かぶ丸い円が白色でシンボリックに描かれ、「涅槃円浄」と記されている。
五趣生死の輪は、中心に小円を表わし、外輪と小円のあいだは五等分して、右上から順に天・畜生・地獄・餓鬼・人間の各界(すなわち五趣)を、小円中には定印坐像の一仏を配し、その周辺に鳩・蛇・猪を描いて、それぞれ多貧・多瞋・多癡と註記する。
また、輪環をもつ無常大鬼の回りにも葬送の人々や、舟を漕ぐ人物など12因縁を中心に18種の図柄を表わす。
「五趣生死輪図」は地獄絵の1ジャンルで、インドの、アジャンター第17号窟にその痕跡をとどめ、現在でもチベットやネパールなどの国々で流布している。
日本では、12世紀初頭に奈良・興福院の中門に、この仏画と推定される図柄のものが懸けられていた記録(「七大寺巡礼私記」)があるが、その後の作例はみられない。
江戸時代末期、江戸駒込・西教寺8世沙門潮音が画工に命じて当図を作成し、人々の求めに応じ木版刷りを刊行し、明治に及んだ。
妙楽寺の本図は明治25年(1892)、潮音の図を参考に26日で完成させたという大画面の大作で、表装裏面に作図の縁起が貼付されている。
大画面を破綻なくまとめて品格もあり、わが国では類例の少ないテーマを扱った大作として注目すべきものである。
表装裏墨書名
明治二十五年七月二十四日 東台壽昌沙門慈尚敬識 つかのまも この五輪見る人と ともにさとらむ 涅槃圓輪
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